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神戸地方裁判所 昭和61年(ワ)317号 判決 1989年11月28日

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

一  請求の趣旨

第一  当事者の求めた裁判

1  被告は、原告らに対し、各金一四〇万九一六六円及びこれに対する昭和六一年三月一四日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  第一項につき仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二 当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、共同してレストランを経営する(以下「本件事業」という。)ため、レストラン建築用地として別紙物件目録記載の各土地(以下「本件土地」といい、個別的には地番のみ表示する。)を訴外鈴木正純(以下「鈴木」という。)から賃借することとし、同人との間で昭和五八年九月二二日、左記のとおり土地賃貸借契約を締結した。

期間  昭和五八年九月二二日から三〇年間

賃料  一か月三八万円、毎月五日限り当月分支払い。

目的  店舗敷地及び屋外駐車場

敷金  六〇〇万円。五年間据置のうえ無利息で返還。五年以内に解約の場合も五年経過後に返還。

2  本件土地は、市街化調整区域内にあるので、レストランを建築するためには、都市計画法(以下、単に「法」という。)四三条一項本文の許可(以下、単に「四三条の許可」という。)を必要とするものである。

3  原告らは、昭和五八年一〇月二五日、兵庫県加西市に原告高瀬名義で本件土地上に床面積三一〇平方メートルの飲食店を建築しようとする四三条の許可を求める申請書を提出したが、その際、原告らは、右飲食店が法三四条一項八号該当のドライブインであるとして申請をした。

4  その後、加西市の指示により原告らの申請代理人である訴外鎌船光則(以下「鎌船」という。)が被告社土木事務所(以下「社土木」という。)を訪れたところ、担当者の市橋孝夫(以下「市橋」という。)は、原告らの申請は法三四条一項一号店舗(以下「一号店舗」という。)として許可の可否が検討される事案であると指摘のうえ、一号店舗は、同号の趣旨からいって著しく規模の大きなものは除外され、床面積約一六〇平方メートル位のものに限定されること、右申請のごとき床面積三一〇平方メートルもの店舗は一号店舗の許可申請をしても許可の対象とならないので右申請を取り下げ、改めて、一六〇平方メートル程度のもので申請し直すことを強く指示したので、原告らはやむなく右申請を取り下げた。

5  原告らは、本件事業を諦め切れず、何とかして四三条の許可を得ようと考えた結果、原告高瀬が本件土地のうち八八四番一の土地上に床面積一六〇平方メートル程度の喫茶店を、原告内藤が本件土地のうち八八三番一の土地上に同規模のそば・うどん店をそれぞれ別個に建築しようとする四三条の許可を被告に申請し、現実の建物として三一〇平方メートル程度の一個の店舗を建築する方法を試み、喫茶店について昭和五九年一月一一日、そば・うどん店について同年五月二八日、四三条の許可を得た。

6  原告らは、右許可に基づき昭和五九年八月六日、建築基準法六条一項の規定に基づく建築確認申請をしたところ、社土木から別個の四三条の許可による両建物を現実に接続することは許さない旨指摘された。そこで原告内藤は、同日、鎌船とともに社土木を訪れ、床面積三一〇平方メートルの飲食店の建築はどうしても許可できないのかと確認したところ、市橋及び参事の井上貢(以下「井上」という。)は絶対にその規模では一号店舗に該当しない、一号店舗といえるにはせいぜい床面積が一六〇平方メートルまでだと断じたため、原告らは本件事業を断念するに至ったのである。

7  そのため、原告らは、本件土地の賃貸借契約を解約せざるを得ない状況になり、既に本件土地に施行した造成工事の工事費を回収できない虞れがあったところ、訴外衣笠卯一(以下「衣笠」という。)から原告らの土地賃借人の地位を承継し、右工事費を肩代わりするとの申し入れがあったため、同人に右契約の承継及び工事費の肩代わりを依頼することとなり、鈴木もこれを了承したので衣笠が四三条の許可を得た上でこれを実行することになった。

8  そこで、衣笠は、被告に対し、本件土地上に床面積四六〇・五平方メートルの飲食店を建築しようとする四三条の許可申請をしたところ、被告は、これを同年一一月八日フリーパスで許可した。

9  ところで、原告らが四三条の許可を申請した店舗(以下「原告ら店舗」という。)は、ドライブインの呼称にかかわらず、実質は顧客に料理した飲食物を供する店舗であり、衣笠申請の店舗(以下「衣笠店舗」という。)と構造、用途その他の面で差異が認められないのみならず、衣笠店舗は原告ら店舗よりは一五〇平方メートル以上も床面積の大きいものであったが、被告は、衣笠店舗を一号店舗として許可したのである。

かように、原告ら店舗と衣笠店舗とは実質的には同一であり、しかも前記のとおり衣笠店舗の方が床面積が大きいにも拘わらず、衣笠店舗を一号店舗として許可しながら、市橋や井上は、原告ら店舗について一号店舗としては規模が大きすぎるとの誤った行政指導をしたもので法に違反する。また市橋や井上は、衣笠やその代理人である西川正一(以下「西川」という。)に対しては再三に亘り修正指導をし、便宜を計ったのに反し、原告らに対しては面積が大きすぎて許可できないとの威圧的な態度に終始した行政指導をしたもので、その後の衣笠に対する行政指導及びこれに基づく許可処分と対比すれば、行政上の基本原則である平等取扱原則に違背する不公平なものであり、違法な公権力の行使というべきである。

10  原告らは、かかる被告職員の違法な公権力の行使により、次の損害を被つた。

(一)  敷金の返還差額 二〇〇万円

原告らが本件事業を断念したため、本件土地の賃貸借契約を解除したが、敷金六〇〇万円のうち四〇〇万円が返還されたにすぎない。

(二)  農地転用分担金 一一万八三三二円

(三)  農地転用申請手数料 一〇万円

(四)  設計料 六〇万円

原告らは、本件事業についてすべて二分の一ずつ出捐しているから、損害額は二分の一ずつの一四〇万九一六六円となる。

よって、原告らは被告に対し、右の損害賠償として各金一四〇万九一六六円及びこれに対する弁済期後であることの明らかな昭和六一年三月一四日から支払い済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する答弁

1  請求原因1記載の事実は不知。

2  同2、3記載の事実は認める。

3  同4記載の事実のうち、原告らが申請を取り下げたことは認めるが、その余の事実は否認する。

原告ら申請のドライブインは、その必要とされる駐車スペース・建物の構造・規模等からみても明らかにその顧客を遠方のドライバーを含む広範囲の地域に居住する住民を対象とする沿道サービス施設であるので、社土木の担当者市橋は、原告ら店舗が都市計画法施行令(以下「施行令」という。)二九条の三第一号に規定する道路の円滑な交通を確保するために適切な位置、つまり市街化区域からの距離が概ね五〇〇メートル以上(開発許可制度の運用に基づき市街化区域からの距離を概ね五〇〇メートル以上としている。)の位置になかったため、法三四条八号の許可基準に該当しにくい旨の行政指導をしたにすぎない。また一号店舗の規模については、昭和四四年一二月四日付建設省計画局長及び都市局長通達により、当該開発区域の周辺の市街化調整区域に居住する者を主たるサービス対象とすると認められるものに限定すべきものと解されるので著しく規模の大きいものは原則として認められないとされているが、その具体的な基準については一律的な定めはないので、市橋において自らの経験により一号店舗として確実に許可されるであろう店舗面積を原告らに示したにすぎない。

4  同5記載の事実のうち、原告高瀬が本件土地のうち八八四番一の土地上に喫茶店を建築しようとする四三条の許可申請をし、これが許可されたことは認めるが、その余の事実は否認する。

右喫茶店の延面積は一五九平方メートルであり、右申請書は加西市から送付されて社土木に昭和五九年一月九日付で受理され、同月一一日付で許可された。

また八八三番一の土地を敷地とする延面積一六〇平方メートルのそば・うどん店の申請人は株式会社かもよし本店(代表者取締役は原告内藤、以下「かもよし」という。)であり、その申請書は加西市から送付されて社土木に同年五月二二日付で受理され、同月二八日で許可された。

5  同6記載の事実のうち、昭和五九年八月六日建築確認申請がされたことは認めるが、その余は否認する。

右申請は、前記喫茶店については、申請人が原告高瀬及び衣笠であり、そば・うどん店については、申請人がかもよし及び衣笠であって、申請人が四三条の許可を受けた者と異なるうえその建築内容が、許可内容と著しく相違していたため受理されなかった。

6  同7記載の事実は不知。

7  同8記載の事実のうち、八八四番の一の土地につき申請人を衣笠とする四三条の許可が同年一一月八日付でされたことは認めるが、その余の事実は否認する。

右許可申請書は、加西市から同月一日、社土木に送付され同月七日付で受理されたが、右申請は八八四番一の土地を敷地とする延面積は四〇八・二五平方メートル、鉄骨造平家建の飲食店の建築に関するものであり、これは法四三条二項、施行令三六条一項一号及び二号イ並びに法三四条一項一号に該当するものとして、適正な審査を行ったうえで許可したものである。

8  同9記載の事実は否認する。

原告ら店舗と衣笠店舗とは次のような相違がある。即ち、原告ら店舗は、ドライブインレストランであり、法三四条八号に規定する市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は不適当なものに該当する建築物であるのに対し衣笠店舗は同条一号に規定する日常生活のため必要な物品の販売等の業務を営む店舗に該当すること、原告ら店舗が沿道サービス施設であって主に周辺道路の利用者を対象とするものであるのに対し、衣笠店舗は周辺の地域に居住している者を対象とする等、両者はその設置目的、利用対象者等が相違している。

衣笠店舗は、焼肉店、ラーメン店、喫茶店という三業種が複合的に配置され、構造的にも建物の真中に廊下があり、前記三つの店舗がそれぞれ独立した客室となっているため、一つ一つの店舗としては床面積一〇〇から一五〇平方メートルとなっていること、三つの完全に区切られた店舗に異なった業種の店舗を置くので、サービス対象、利用客、利用時間等が変わってくるので独立した店舗と認められること等の理由から、衣笠店舗は一号店舗の趣旨、即ち設置目的、サービス対象、業種、規模等についていずれも適法な内容を備えていたのである。

9  同10は争う。

敷金が二〇〇万円差し引かれたのは、原告らが本件土地の賃料を全く支払わなかったためであり、設計料は設計図面作成の対価として支払われるものであり、また農地転用の費用については既に原告らは農地転用を完了しているもので、原告らにはいずれも損害賠償請求の対象となるような損害が発生していない。

第三 証拠<省略>

理由

一  本件土地が市街化調整区域にあるので、レストランを建築するためには四三条の許可が必要であること、昭和五八年一〇月二五日原告高瀬名義で加西市に本件土地上に床面積三一〇平方メートルの店舗を三四条一項八号該当のドライブインとして建築しようとする四三条の許可を求める申請書が提出されたこと、右申請は取り下げられたこと、原告高瀬が八八四番一の土地上に喫茶店を建築するための四三条の許可申請をなし、これが許可されたこと原告らが昭和五九年八月六日建築確認申請をなしたこと、八八四番一の土地につき申請人を衣笠とする四三条の許可が同年一一月八日付でなされたことは当事者間に争いがない。

二  そして、<証拠>並びに前記争いのない事実を総合すれば、次の事実が認められ、これに反する<証拠>は措信せず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

1  原告らは本件事業をするために昭和五八年九月二二日、鈴木から本件土地を、期間三〇年、目的店舗敷地及び屋外駐車場、賃料一か月三八万円との約定で賃借したが、本件土地は市街化調整区域内にあるため、建物を建築するためには四三条の許可が必要であった。

2  そこで、原告高瀬の代理人である不知火建築事務所長の鎌船は、昭和五八年一〇月二五日、本件土地に法三四条一項八号建築物(以下「八号建築物」という。)として床面積三一〇平方メートルのドライブイン(以下「本件ドライブイン」ともいう。)を建築しようとする四三条の許可申請書を加西市都市計画課に提出した(四三条の許可申請の申請窓口は加西市である。)。本件ドライブインは駐車スペース、建物の構造、規模等からみても明らかにその顧客を広範囲の地域に居住する住民を対象とする沿道サービス施設であった。市街化調整区域内で四三条の許可申請書を加西市に提出する場合申請人と県との間で事前協議をすることになっていたため、加西市都市計画課の職員は事前協議がなされておらず、また本件ドライブインは八号建築物としての許可基準に合わないので、鎌船に対し社土木に行くように指示し、社土木の市橋にもその旨連絡した。

3  その後間もなく鎌船が社土木に持参した申請書を見た市橋は申請建物(本件ドライブイン)が八号建築物(沿道サービス施設)としての最低規模要件を充たしていたが、その敷地が市街化区域から五〇〇メートル以内にあったので、市街化区域から概ね五〇〇メートル以上離れていることとする県の運営基準に反するため申請されても許可される見込みのないことを伝え、右申請を取り下げるよう説得したところ、鎌船は同年一一月二日これを取り下げた。

4  数日後、図面を持参して再び社土木を訪れ市橋に面談した鎌船が、喫茶店ができるか尋ねたので、市橋は少し大きいとの感想を述べたところ、さらに市街化調整区域の周辺住民の日常生活に必要なサービス施設である一号店舗についての一般的な許可基準について説明を求められたので市橋は、一般的な基準はないが昭和四四年一二月四日付建設省都市計画局長及び都市局長通達により著しく規模の大きいものは原則として認められないとされているので、その旨及び現に市街化調整区域内に建築されている事例を参考にしたら規模が判るといったところ、鎌船が何平米かと重ねて聞くので、市橋は自分の過去の経験から大体の目安として床面積が五〇坪程度と答えた。なお、市橋は従前五〇坪以上でも許可した事例があったため、五〇坪以上は絶対に駄目だとは言わなかったし、また鎌船もその直前頃に取り扱った五〇坪以上の建物が一号店舗として許可になったので、五〇坪以上でも許可になる場合のあることを知っていた。

5  その頃、かもよしの代表取締役の原告内藤が社財務事務所副所長と共に社土木を訪れ、計画図面を持参して本件土地に郊外型のドライブインを建てたいとの相談をしたが、当時の社土木の参事兼副所長の別所久夫(以下「別所」という。)及び市橋は、市街化区域から五〇〇メートル以上離れた位置にないので立地的に許可できないこと、市街化調整区域に住んでいる人を対象にした一号店舗ならできる旨話したが、この時も市橋や別所は一号店舗についての床面積が五〇坪以上は駄目だと言わなかった。

6  昭和五八年一一月一五日、鎌船は、原告高瀬の代理人として、本件土地のうち八八四番一の土地について床面積一五九平方メートルの喫茶店を建築しようとする四三条の許可申請書を加西市都市計画課に提出し、社土木に送付されたので、事前審査をしたうえ社土木事務所長は昭和五九年一月九日に受理し、同月一一日付で許可した。

また鎌船は、同年三月五日、かもよしの代理人として本件土地のうち八八三番一の土地上に床面積約一六〇平方メートルのうどん・そば店を建築しようとする四三条の許可申請を加西市都市計画課に提出したので社土木に送付され、社土木事務所長は事前審査を終えて同年五月二二日受理し、同月二八日付で許可した。また同年六月頃から衣笠が原告らの事業を引き継ぐ話が出るようになった。

7  原告らは株式会社大和一級建築士事務所長の西川を代理人として、同年七月二六日社土木建築主事宛に、八八四番一の土地について申請人を原告高瀬及び衣笠、八八三番一の土地について申請人をかもよし及び衣笠とする二件の建築基準法六条一項に基づく建築確認申請書を加西市に提出したが、その内容は、八八三番一と八八四番一の土地を一つの敷地にして建物を地番の境の上で接続して実質的に一個の建物にしようとするものであったので四三条の許可を受けた者と今回の申請者が異なっていること、二つの敷地について受けた別個の四三条の許可による建物を接続して両敷地にまたがる一個の建物として建築しようとするもので、四三条の許可を受けたことにならないこと、用途上不可分かつ機能的に一体性を有する一個の建物を敷地の境界において書類上形式的に二個に分断したものであったことのため、建築確認できるようなものでなかったため、社土木の参事兼副所長の井上や市橋は西川に対し右申請書類を持ち帰るよう説得し、その結果右申請書類は持ち帰られた。

8  その後西川は再三社土木を訪れ、建築確認が得られる方法について相談したので、市橋や井上は、原告高瀬、かもよし、衣笠の三人が共同申請するものと考え、西川を通じて検討した。その間に西川から八八四番一の土地が四三条の許可がいらない既存宅地(法一項六号ロに該当する土地)と認められるものではないかとの申出がなされたため、社土木において調査したが、確証が得られなかった。

そのうちに西川は、新たに具体的な一号店舗の案(衣笠店舗の案)を持って来た。その内容は、一号店舗としてはかなり大きな規模を持つものであったが、焼肉店、喫茶店、ラーメン店の三業種が複合して配置され、構造的にも建物の真中に廊下があり、前記三つの店舗が独立したもので、従来にはなかったタイプであった。そこで西川は、井上や市橋と協議して店舗の一部を倉庫にしたり、店舗敷地を八八四番一の土地だけにする等の何回かの修正を加えた結果、三つの業種の店舗は、完全に独立しており、三つの店舗と共通する厨房があるため床面積は四〇〇平方メートル以上であるが、各店舗の営業面積は一〇〇平方メートル程度であり、三つの店舗は利用客、営業時間が異なるから独立の店舗と認められること等から、加西市全域をサービス対象とするものではなく、市街化調整区域内の居住者の日常生活に役立つ施設であると認められたので、社土木としても一号店舗許可相当と判断するに至り、西川にその旨伝えた。その時点で、井上、市橋らは、その申請人が衣笠のみで原告高瀬やかもよしが申請に加わらないことを初めて西川から知らされ、後のトラブルを避けるため、右申請について原告高瀬及びかもよしが異議のないことを示す念書を申請書に添付するよう西川に指示した。その結果、西川は、八八四番一の土地に一号店舗(衣笠店舗)を建築しようとする四三条の許可申請書を提出し、事前審査を終えて社土木事務所長は同年一一月七日受理し、同月八日付で許可をした。

三  原告らは、井上や市橋が原告ら店舗についての規模が大きすぎ、四三条の許可が出る見込みがないとの誤った違法な行政指導を威圧的な態度でしたため本件事業の継続を断念した旨主張するが、前記認定の事実によれば、最初原告高瀬の代理人鎌船が申請したのは八号建築物としてのドライブインであり、立地条件から許可される見込みがなかったため、市橋が鎌船に対し取り下げるよう説得したこと、市橋が鎌船に対し一号店舗として許可される喫茶店の規模の一応の目安として床面積が五〇坪程度と述べたにすぎないこと、原告高瀬も原告内藤が代表者となっているかもよしも床面積が五〇坪程度の喫茶店、そば・うどん店を建築するとしてそれぞれ四三条の許可を得たが、建築確認の段階でそれぞれ衣笠を共同申請人とし、用途上不可分かつ機能的に一体性を有する一個の建物を敷地境界において書類上形式的に分断した二個の建物の建築確認申請をしたため、建築確認を得られないところから市橋や井上の説得により申請書類を持ち帰ったことが認められるのであって、市橋や井上が原告ら主張のような誤った違法な行政指導をしたものでないことは明らかである。

四  更に原告らは、原告ら店舗と衣笠店舗とは実質的に同一であり、しかも衣笠店舗の方が床面積が大きいのに拘わらず、原告ら店舗については規模が大きすぎるとの行政指導をして取り下げさせながら、衣笠店舗については再三修正指導をして許可したもので、平等取扱原則に違背する違法がある旨主張するが、前記認定の事実によれば、原告らの店舗は八号建築物としてのドライブインであり、沿道サービス施設で周辺道路の利用者を対象とするものであり、立地条件の点から許可される見込みがなかったため、取り下げられたこと、建築確認を得られなかったのは別個の四三条の許可による両建物を接続して一個の建物としようとしたため等の理由によること、どのような目的で、どのような建物を建てるかは本人の決める事項で被告職員が指示する性質のものではなく、原告ら代理人鎌船が、床面積が三一〇平方メートル位の店舗図面を社土木に持参して市橋に対し喫茶店営業の許可がでるかどうかを聞いたので一般論として一号店舗としては広すぎると答えたにすぎないこと、他方衣笠店舗は一号店舗として市街化調整区域の周辺に居住している者の日常生活に必要なサービス施設で、周辺住民を対象としていること、また衣笠店舗は焼肉店、喫茶店、ラーメン店という三業種が複合的に配置され、構造的にも、また利用者や営業時間が変わるため独立の三店舗と認められ、各店舗の営業面積はこれまでの基準を越えるものではなかったことが認められるのであって、原告ら店舗と衣笠店舗はその設置目的、利用対象者、建物の構造、用途等が相異しており、衣笠店舗は一号店舗の趣旨に合致する内容を有していたのであり、これに前記認定の衣笠店舗が許可されるに至った経緯等を考え併せると、社土木の井上や市橋の行政指導に原告主張のような平等取扱原則に違背する違法があったものとは認められないというべきである。

五  よって、原告らの本訴請求は、その余について判断するまでもなく失当であるから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条、九三条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長谷喜仁 裁判官 將積良子 裁判官 横山巌)

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